「大量廃棄を防ぐため、年末年始に牛乳をいつもより一杯多く飲み、料理に乳製品を活用するなど、国民の協力をお願いする」
年末年始に生乳が5000トンも廃棄されるという事態に、岸田文雄首相が異例の呼びかけをしました。
確かに日本人の4分の1がコップ一杯の牛乳を飲めば6000トン消費されるので問題は解決!となるのでしょうが、そううまく行くでしょうか?
お店でどれくらい廃棄されているのか
2015年、公益財団法人流通経済研究所がスーパーや生協を対象に食品ロスを調査した「日配品の食品ロス実態調査結果」(2015年3月6日)によると、廃棄される牛乳は、なんと推計で年間4723トンにもなるそうです。これはスーパーと生協の数値ですから、コンビニや飲食店、最近ではドラッグストア等を含めるとさらに数字は上がります。
ちょっとびっくりですね
食品ロス、「家庭からが約半分を占める」
実は家庭から廃棄される「捨てがちな食品」の1位は牛乳です。
「オレンジページくらし予報」では、国内在住の20歳以上の女性を対象に「食品ロス」について調査しました。
食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。「持続可能な開発目標」(SDGs)の対象であり、大きな社会課題の一つと言えます。
日本では、食品を粗末にすることを「もったいない」と戒めてきただけに、食品ロスの認知率も関心も、高いと言えますが、実際は日本の食品ロスが年間643万トンあり、その約半分は家庭から排出されています。
日本の国民1人当たりの食品ロス量は、1日に約139g(茶碗1杯のご飯の量に相当)、年間では約51kgにもなることになります。
MOTTIANAIが消息不明になる数値ですね。
「捨てがちな食品」の1位は牛乳!
食品ロスへの関心が高い一方、消費期限や賞味期限を過ぎた食品を「捨てることがある」のは61.9%です。そのうち「牛乳・乳製品」59.2%がトップです。
料理をされる方はお分かりかと思いますが、ホワイトソースを使う料理があったとして一回の調理に使用する牛乳の量ってそう多くはないありません。
自分はできる限り無駄にならないようにと二人分で1本200mlのパックをできるだけ購入しますが、分かっていてもついつい買いすぎるのが人間のさが。
毎日日課で飲んでる人は別でしょうが、データを見る限り賞味期限の短い牛乳「使い切れずに捨てる」ことって珍しくないことがわかります。
牛乳離れが深刻化
人口が右肩上がりで増えていた1990年代までは増加の一途で、給食でもたくさん飲まれました。
独立行政法人農畜産業振興機構によれば、牛乳の消費は1966年の201万キロリットルから1996年には505万キロリットルと30年間で約2.5倍に増加しました。
しかし、ご存知の通りそこから少子化時代へ突入し農畜産業振興機構によれば、2013年にはピーク時に比べ3割減少の350万キロリットルと、17年間で150万キロリットル減少しました。今も増えていません。
また、時代に応じて「多様化」しているのも拍車をかけています。オーツミルクなど穀物系のミルクなど選択肢が増え牛乳が慣れが進んでいるという現状もあります。
「牛乳を飲もう!」呼びかけの効果はあるのか
先述したように、国民一人コップ一杯の牛乳を年末年始飲めば、かなりの量の消費が見込まれます。しかし、それは廃棄量を一時的に減らす程度であり、根本の問題を解決するものではありません。勿論、キャンペーンきっかけに今後牛乳の消費が増えることも想定できますが、かなり限定的でしょう。
やはり、長期的な対応が必要そうですね。
牛乳イノベーション!ミルクファッション登場
牛乳の消費を高めるために様々な乳製品があるなか「ミルク繊維」というものがあるそうです。ヨーグルト、チーズ、バター、生クリーム、アイスクリーム…そこまでは想像できるけどミルク繊維って?JミルクのWEBサイトを閲覧するとこう解説されています。
牛乳から取り出されたカゼインというたんぱく質に、アクリル繊維の原料になるアクリルニトリルを結合させてつくられます。プロミックスと呼ばれる繊維です。シルクのような風合いと光沢があり、吸湿、速乾性に優れ、適度な保湿性があります。1970年代に、シルクの代用品として、着物地用に開発されました。
現在でも、ミルク成分を配合した繊維は、タオルや下着など、肌ざわりの良さが求められる製品に生かされています。
なんと、牛乳ってファッションにもなるんですね。
牛乳を着る。考えたこともないイノベーションです。
持続可能な社会が浸透し、アパレルメーカーにとってブランドイメージを向上するためのサスティナブル製品として利用価値は大きのではないでしょうか?ミルクファッションが浸透すれば、長期的な廃棄の問題に一石を投じるし、若者が牛乳に関心を持つきっかっけになるかもしれません。
まとめ
食品ロスは大きな社会問題ですが、少子化や商品の多様化(パーソナライズ化)が進み、同じ価値観で消費を促進させるのは難しい時代になっています。それを乗り切るためには既存にとらわれず、新たな商品価値を生み出すアイデアが牛乳に限らず必要だということを改めて実感しました。